NHKためしてガッテン!「元気回復! 水の飲み方 大革命」より

2007年5月9日放送 

健康のために水を飲むという人も増えています。とはいえ、ほとんどの人の水の飲み方は「喉が渇いたら飲む」程度。ところが、専門家からは、「ただ“渇いたら飲む”だけでは、体内の水分を保つには不十分」との指摘が! ノーベル賞も受賞した新発見が解き明かす「新しい水の飲み方」とは?


暑くも寒くもない気候で、安静にしている時に、1日に失われる水分量は、尿はおよそ1400ミリリットル、呼吸・皮膚からの蒸発はおよそ900ミリリットル、便に含まれる水分としておよそ200ミリリットルで、1日合計約2500ミリリットルになります。暑い時や運動時に汗をかくと、これに加えてさらに1日1リットル程度水分を失います。腎臓が1日に濾過する血液の水分量はおよそ150リットル。腎臓は、全身でおよそ4リットルある血液中の水分を濾過し、その99%を再び血液に戻して繰り返し利用しています。また、余分な水分は尿として排出し、全身の水分量を常に一定レベルに保っています。


10〜20代のヤングチーム、60〜70代のアダルトチーム各4名ずつがかいた汗の総量を、運動前後の体重減少で調べました。その後、失った水分を取り戻したと思うまで十分水を飲んでもらい、その飲んだ量と汗の量を比べました。すると、飲んだ水の量は、かいた汗の量の半分にも満たないという結果になりました。

                             一人当たりの平均
          かいた汗の量     飲んだ水の量
ヤングチーム    512ミリリットル     113ミリリットル
アダルトチーム   525ミリリットル     250ミリリットル


なぜ、ずっと少ない水分補給で満足してしまうのでしょうか? 「喉の渇き」の仕組みを調べると、不思議なことが分かりました。


ノドの渇きだけに頼って水分を摂取していれば大半が水分不足の状態なのに、なぜ何事もなく生活できているのでしょうか? 実はそこで活躍しているのが、ノーベル賞受賞の最新研究で発見された「アクアポリン」だったのです。2003年、アメリカの科学者が人間の体の細胞に「アクアポリン(水の穴)」と名付けられた新物質を発見した功績で、ノーベル化学賞を受賞しました。


血液中の水分が不足すると、脳は「脱水状態」を検知し、特別なホルモン(抗利尿ホルモン)を分泌して、腎臓に脱水を知らせます。すると、腎臓の細胞内にあるアクアポリンたちが、腎臓内で作られた尿(原尿=げんにょう)が流れる管の表面に移動し、「水の穴」を通じて、尿の中からきれいな水だけが取り出され、水分の減った血管に注ぎ込まれるのです。こうしてアクアポリンは、脱水の危険から私たちの体を守っていたのです。


アクアポリン。その実体は、内部に小さな穴が開いた筒型のたんぱく質で、この穴は、1秒間に数十億個もの水分子が通り抜けることができますが、ちょうど水分子1個がギリギリ通り抜けられるサイズになっているため、水分子より大きい尿中の老廃物などは、通り抜けられないのです。


しかし、最近の研究では60〜70歳代にかけて、腎臓の機能の衰えとともにアクアポリンの数も減少していくと考えられ、また、腎臓はホルモンによる脳からの指令への反応が鈍くなってしまいます。その結果、尿から水分を取り戻すことで脱水症状を緩和することが難しくなるのです。その分、積極的に水分を摂らないと、脱水症状に陥りやすくなります。若い頃と同じように、「渇いたら飲む」という意識だけで水分を摂取していると水分不足に陥りやすく、放置すると脳こうそくや心筋こうそく、熱中症の危険が高まります。


つまり、1日に摂るべき水分量を決めて、意識的に飲むことが重要になってくるのです。1日3食の食事中に約1000ミリリットルの水分が含まれているため、最低でも残り1500ミリリットル分は水分として摂取する(飲む)ように意識することが望ましいといえます。失いがちな水分量をある程度知った上で、「失う前に“先取り”して飲む」のが理想的です。一度にがぶ飲みすると、尿として出てしまいやすいので、「“小分け”に飲む」ことをおすすめします(夜間頻尿につながる場合もあるので、飲み過ぎにはご注意ください)。


アルコールは利尿作用が高く、飲んだ以上の水分が尿として排出されるので、水分摂取の目的には適しません。カフェインを多く含むコーヒーなどの飲料も、高い利尿作用があり
ます(麦茶やほうじ茶などはカフェインが少ない)。糖分を多く含むジュース類や清涼飲料水は、糖分の摂りすぎに注意してください。



以上、人体はすばらしい濾過装置を持っていて、水不足の時は、純水の水だけを尿から血管に逆流させるというのですから驚きました。これは人間だけに限らず動物全体にいえることでしょう。自然界の仕組みの偉大さを改めて感じました。
それにしても、老廃物に比べて水の分子は非常に小さいためこのようなことが可能になるのですね。水にも分子が大きいもの小さいものいろいろあるようですので、今後、科学的な究明が期待されます。大変「水の飲み方」で教えられることがたくさんありましたので、少々長くなりましたが引用させていただきました。きっとお役に立ちます。詳しくはNHKのHPをご覧下さい