トップ一人の独断は危険だ(その2)

宮家邦彦氏の「公開情報深読み」で、ウクライナ侵攻について、プーチンの四つの戦略的「判断ミス」があったとし、

筆者がプーチン大統領の「誤算」に注目するのは、こうした「誤算」は、プーチン氏だけでなく、今後、中国の習近平国家主席など他の政治指導者が繰り返す恐れがあると思う。

       誤算1:  ウクライナ軍・義勇兵の善戦

       誤算2:  歴史的イデオロギー的認識

       誤算3:  NATO諸国の結束

       誤算4:  情報戦の戦闘能力

 

プーチン時代の「終わりの始まり」か

 ウクライナ側は徹底抗戦する構えだが、ロシア側が非戦闘員の犠牲を覚悟で無差別攻撃すれば、キエフは陥落する可能性が高い。一方、最初の4日間で、ウクライナは悲劇の主人公となり、ゼレンスキー大統領は英雄となり、ロシアの名声は地に落ち、プーチン大統領は「悪の権化」と化した。ロシアは「得るもの」よりも「失うもの」の方が大きいだろう。

 

 同じように、木下尚江(著)「火の柱」の「二十三の一」の中で、或る将軍の言として

 

「戦争のことは上(かみ)御一人(ごいちにん)の御叡断(ごえいだん)に待つことで、民間の壮士などが彼此(かれこれ)申すは不敬極(きは)まる、何故内務大臣は之を禁じない。だから貴様等は不可(いかん)と言ふのだ、法律などに拘泥(かうでい)して大事が出来るか、俺など皆な国禁を犯して維新の大業を成したものだ、早速電話で言うて遣(や)れ、俺の命令だと云うて――輦轂(れんこく)の下をも憚(はばか)らず不埒(ふらち)な奴等だ」

と、この将軍は上御一人がきめることと信じて露ほども疑わない。プーチンとか習近平とか上御一人が決定を下すのは極めて危険なことであると思っていないから、危険なのだ。

余談ですが、木下尚江さんは、戦時中に勇敢にも戦争反対を叫んだ高校の大先輩で、「きのしたしょうこう」と尊称していました。