オリンピックもいいが、財政赤字をどうする?

オリンピック東京開催が決まって日本中大喜びだ。私個人も楽しみであることは間違いないが、現在の残高830兆円に及ぶ国債の最初の発行は東京オリンピックの翌年であった ということを忘れてはならない。
これまでの、世界各国のオリンピックをみてみよう。

 1976年のカナダで開催されたオリンピックは、カナダの財政赤字を膨らませた。1980年のモスクワでは11年後の1991年にソ連そのものが崩壊した。1984年には米国(ロサンゼルス)で開催されたが、米国の貿易と財政の双子の赤字がどうにもならず翌年の1985年に無理やり円を240円に上げさせた。プラザ”合意”というがこれから日本の経済の滅茶苦茶が始まった。バブル景気とその後の失われた20年にも及ぶ長期不況の起点になったのだ。
 1988年のに韓国のオリンピックでは1997年の通貨危機を招き、1992年にはスペインでオリンピックが開催されたが、今スペイン経済は景気が最悪だ。それでもオリンピックをやりたいというのだから、理解に苦しむ。
 1996年のアトランタオリンピックの翌1997年にアジアで通貨危機が発生し、それがロシアにも及び、LTCMが1998年9月に破綻に追い込まれた。
 2000年のオーストラリアでのオリンピック以降、オーストラリア経済成長率は鈍化。
 2004年のギリシャでのオリンピックがギリシャの財政を悪化させ、2010年の欧州の信用不安を招くことになる。
 2008年の中国で開催されたオリンピックだが、それほど大きな落ち込みとはならなかったが、この年に発生したリーマンショックに対処すべく4兆元(57兆円)もの景気対策で、今や中国のリーマンショックが起きるのではないかとささやかれている。
 どの国でも、オリンピックまでは景気がいいのだが、その後は例外なく後遺症に苦しんでいる。
 
ふり返って日本はどうか。
現在の国債発行残高830兆円にも及ぶきっかけは、東京オリンピックであったということを、不思議なことにTVでも新聞でも誰もいわない。
オリンピックにかこつけて、なんでもかんでもそれ行けドンドン。高速道路、鉄道新線、空港拡張、国立競技場、オリンピック村・・・。作るのはいいが、それには莫大な金がかかる。それを孫やその孫にツケをまわして、今生きている自分が楽しみたいということか。
オリンピックの名のもとに世界各国で、国家単位で滅茶苦茶な乱費を繰り返してきた。一時的に景気は良くなるが、その時の財政支出を取り戻せないのだ。
今や、国と地方の借金は1,200兆円にも及ぶ。これをゼロにするためには、これから数十年30数%の消費税にしなければならないそうである。3〜4%上げるのにこの騒ぎだ。30%など絶対不可能だ。黒田日銀総裁は、もしここで消費税を上げないならば「どこかでぼっきり折れる。折れたときは政府も日銀も対応できない」(9月8日の日経新聞)と言っているが、消費税を上げようが上げまいが、いつか必ず「ぼっきり折れる」ときがますます近づいたということではないか。

それは、金利が上がって国債が下がるということを意味する。我々は直接国債は買っていないが、銀行や郵便局は我々の貯金で国債を買っている。その国債が半分とか3分の1の価値した持たないときがくるかもしれないのである。
TVや新聞や雑誌で、この辺のところをしっかり報道しないと、政治家や官僚は、“ハコモノ”を作りたがる。ここ鹿児島でも、バックに桜島を望む景勝の地に馬鹿でかい体育館を作ろうとした。余りの大判ふるまいにさすがの県民も反対して取り止めとなって、ことなきをえたが・・・。