日本が倒産する!?(その2)

30年前、当時国債残高82兆円にびっくりした土光さんは第二臨床を引き受け、財政再建を成し遂げようとした。しかし30年後の今、国債残高は1000兆円を超えた。つまりはその後、土光さんに次ぐ人は一人も現れなかったということだ。
考えてみれば、残念なことではあるが当然かもしれない。というのも、権力者・成功者というのは、脛に傷を持つか、たたけばほこりが2つや3つはおろか10も20も出てくる。やり手、強欲、刑務所の塀の上を歩く、ブラック企業といわれるような、際どいことをさけていたら、人を出し抜いて一国一城を支配するような実力者にはなれない。一般の人はそういうことを具体的には指摘できなくとも薄々は知っている。だから自分の子供には特別出世してとか、金持ちになってくれとは思わない。金持ちや立身出世者をなんとなく胡散臭いとみて尊敬しない。

しかし、財政再建既得権益の排除、特殊法人の整理等々、極めてむつかしいことを成し遂げるためには、実力者とか出世した人というだけでは不十分で、その上に尊敬される人物でなくてはならない。ところが、土光さんはたたいてもほこりの出ない人だった。誰もが一目を置き、尊敬された。しかし、既得権益抵抗勢力という厚い岩盤にはばまれなかなか前に進めない。土光さんは考えた。国民的な人気の本田宗一郎さんに頼もう。意気に感じた本田は井深大さんとともに国民運動を展開。その井深さんの乾杯の音頭。「土光さんのやっていらっしゃる臨調の仕事をバックアップしたいという気持ち、非常にきれいな気持ちで集まっていらっしゃる皆様方と思うので、臨調が本当に日本のために成功するよう乾杯したい」。あんな偉い、お年を召した井深さんが「きれいな気持ち」とおっしゃった。我々胸に一物、脛に傷の者にとって、大勢の前で「きれいな気持ち」とは、なかなか言えない。こうして、土光さんは国民をバックに、さしも堅固を誇った、国鉄電電公社の改革をなしえたのだ。
 
諮問会議は、今後毎年2%の成長でも45兆円の節減をしなければ財政の再建は不可能と言っている。消費税の30%に相当する。たった2〜3%UPするだけで大騒ぎだった。それを30%など途方もない。といって45兆円を削れるはずもない。今までだれもできなかったように今後も誰もできないだろう。
 
その、問題の2060年。人口は、このまま行けば8674万人になるという。そんなことになればますますこの1000兆円の完済は夢のまた夢。最近の出生率1.4を2.07に回復させれば何とか1億人で踏み止まれるという。それには、住宅事情の悪い育てにくい東京では無理だ。事実東京の出生率は1.04という。結局、東京はブラックホールで、地方から何から何まで吸い付くし最後は自爆するという増田レポートを嚆矢としなければならない。東京1極集中などという無駄な国土の使い方をやめて、強固な既得権益の岩盤に穴をあけ、箱物作りの無駄を省き国民一人ひとりが一生懸命働くしかないのだ。矢張り地方に住んでもらってたくさんのお子さんを育ててもらうしかない。地方の産業を育て、幼児を全員預けられて女性にもどんどん健闘してもらわなければお国を再建できるはずもない。祝日を増やしたり、オリンピックを招致して国立競技場を建て直すなど国民が喜ぶことに安易に金を使うのではなく、国民はやはり、全員まじめにこつこつやるしかない。昭和30年代を見本とせよといいたい。

土光さん以降30年間で、もう日本の財政はノーリターン(回帰不能)のポイントを超えてしまったかもしれない。としたら、我々はどうして子孫に言い訳が立つだろうか