政治家・官僚・経済学者の円高無策が、今の日本の不況を招いた

昭和30.40そして50年代と日本は高度経済成長を謳歌していた。今は中国がそれを受け継ぎ、日本はこの20年、給与が下がる一方だ。昔好景気の頃、その理由付けとして、国民の勤勉性・官僚の優秀性・識字率・終身雇用制・総中流意識などが上げられたが、今の中国にさして備わっているとは思われない。ただ一つ共通するものがあるとすれば、為替の安さだ。つまり、為替が高いか安いかに殆どの問題は起因すると考えれば判りやすい。

昔、景気がよかったのは円が1ドル360円もしていたからで、アメリカで1万ドル稼げば360万円にもなった。だから、若者たちはこぞって外国に行きたがった。今の若い人たちは、内向きで外国赴任をいやがるというが、実は、今は1万ドル稼いでもたったの80万円にしかならないのだから、行く気がなくなるのも当然と言えば当然だ。経営者にしたって同様だ。たとえば日本の携帯電話は「ガラパゴス現象」とバカにされているが、日本国内でしか売れない。1ドルがたったの80円では儲からないのだ。もし160円にでもなっていれば、売値は2倍にもなるのだから、こぞって外国人の喜ぶ仕様のものを作るのにきまっている。こうしていよいよ国力を減らしていっている。

今中国は好景気だ。それは、元が余りに安いから、日本企業にとって、給与は安いし、日本の工場のほんの一部を売れば何倍もの新工場ができる。誰も中国にまで行きたくはないが、元が安いからみんな吸い寄せられて行く。20年前は中国のGDPは日本のたった1/8、それが今では追い抜かれて、あちらは空母まで作っているという。

東日本大震災で、復旧には20兆とも30兆とも言われているが、そんな金はどこにもない。増税赤字国債かしかないのである。増税といったって、もう国民の給与はこの20年ずっと下がり続けているし、法人だって青息吐息だ。とても増税どころの騒ぎではないのだ。赤字国債といったって、既に1000兆円にも及ぶ借金があり、デフォルト寸前のギリシャを上回るというのだから絶望的だ。その上、本年も大赤字で、48兆円の歳入しかないのに92兆円の支出予算を組むというのだから、もうでたらめもいいところだ。

なぜかくも悲惨なことになったかといえば、円が360円からこともあろうに80円になってしまったことによる。今もし1ドルが160円としたら、今でも30〜50年代の好況を維持していただろうGDPが毎年6%UPしていたら今では3倍にもなっており、1000兆円の財政赤字もなかったかもしれないし、東日本大震災でもいち早く復興できただろう。エズラ・ヴォーゲルのいう本物の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』になって、夕暮れのアメリカにかわり覇権国になっていたかもしれない。

1971年にニクソン・ショックによりアメリカはドルと金の交換を停止し、1973年には変動相場制に移行し、ブレトン・ウッズ体制終結した。この頃から日本は、政治家・官僚・経済学者が総力をあげて為替のソフトランディングを図るべきではなかったか。現に今の中国は、他国から何といわれようと、元を上げようとしないのだから。
お人よしの日本は、プラザ合意で協調介入などとおだてられ、その後急激に円高が進行していった。お陰で日本はバブル景気とその後の長期の不景気に陥り国際収支は激減した。その間に何の事はない、ただ中国にとって代わられただけであり、今や、中国が外貨準備高でも世界1である。もし、これまでの急激な円高がなければ、相変わらず日本が世界1だっただろう。「アメリカにとって貴国の国債を一番多く買ってくれるのは、中国の方がいいか日本の方がいいか」くらいのことを言って、何故この国の指導者たちがタフネゴシエーターになってくれなかったか。その為替無策が、オギャアと生まれた赤ちゃんにまで800万円の借金を負わせてしまうという体たらくだ。それで「生んでくれ、生んでくれ」と言ったってムリだ。

日本の再生は、消費税・所得税法人税などの増税も止むを得ないだろう。そして、給与も失業手当も生活保護なども削りに削って、みんなで生活レベルを落として1000兆円を減らすしかないのではないか。このとき極端な不景気になろうが、円がついには160円になって、それからようやく日本は回復することになる。ただこの時、お隣の韓国のように景気の回復期に貧富の差が広がらないように、余程の注意が必要だ。