外貨準備高を利用して外国企業を買収せよ

この不景気脱出のために、財政出動の大合唱だが、日経新聞9/7に、元日銀政策委員会審議委員の須田美矢子氏の投稿が大きく掲載されていた。それによれば、「金融政策はあまり役に立たず、中央銀行にできることは成長基盤を強化できる程度である」(別掲)という。私もそう思う。日本はこの20年来、1000兆円にも及ぶ財政出動をして景気振興を図ってきたが、その効果は一向に現れていないからだ。にもかかわらず、人気ばかりを気にする政治家たちは、ギリシャ並みの今に至ってもまだ「増税反対、国債賛成」だ。

この不景気は、為替無策による円高による。昔、日本が好景気だったのは、何のことはない。単に1ドルが360円だったからと、解釈すれば、様々な現象が合点がゆく。やれ、終身雇用だ、教育水準だ、優秀な官僚だ、等々いろいろ語られてきたが、為替によるところが大きいのだ。今中国が好景気なのは元が安いからで、中国は、日本の360円をやすやすと80円にしてしまった愚を反面教師にして、決して元を上げようとしない。その結果の今日の繁栄と解釈すれば、全てが納得できる。日本と同じように通貨高に悩むスイスは、無制限の為替介入を決めたという。

かって2004年の当時、今日と同じような円高局面で、一日1兆円規模の円売りドル買い介入を休み無く続け、徹底した押し下げ介入を実行、もってヘッジファンドの殆どを殲滅し尽くしたという。このとき溝口善兵衛財務官とジョン・ブライアン・テイラー財務次官の間では介入について様々なやりとりがあったといわれており、このことからテイラー・溝口介入と呼ばれている。この介入は、単に円安にする為だけではなく、実際にファンド殲滅という目的をもって実施されたもので、これにより、一説ではアメリカのヘッジファンド2000社が倒産し、自殺者・行方不明者が多数出たという。
今や、溝口さんのように、円高阻止に果敢に立ち向かう勇気ある人はいないのだろうか。

「2011年8月 4日、日銀資産買い入れ基金10兆円増額し、金融緩和を一段と強化し、震災の立ち直り局面から持続的成長経路への移行を確かなものにすることが必要と判断」したという。私も大賛成です。

我々が高校生の頃、日本の外貨はたった10億ドル程度しかなく、何をするにもお金が足りず、名神高速を作るにも外国からお金を借りるような状態だった。しかし今や、経常収支がずっと黒字なのだから、何の為に100兆円(1兆2200億ドル)もの外貨準備が必要なのかわからない。このお金を日本の優良企業に貸し付けてM&Aをやらせたらいい。商社には世界中の鉱山や油田を、IT企業にはアップルやグーグルを買収させればいい。なにしろ今は空前の円高なのだから絶好のチャンスなのである。日本の余りの買収攻勢に世界が音を上げて、円安にしようとすれば、それこそ待ってました、なのだ。そこでようやく円安になって景気がよくなる。この度の日銀は10兆円でその効果を測るというが、その程度では効果など上がらない。

本日の日経新聞によれば、この1ヶ月で、円売りドル買い介入もあり外貨準備高が5兆円も増えたという。昔の貧乏の日本なら大喜びだろうが今の日本では使い道もなく、何がメリットかといえば、ただ将来の急激な円安の備えになるということだけらしい。今この日本を、景気を良くさせることこそ、焦眉の急なのに。


共産主義から衣替えした国家資本主義の中国はソブリンファンドを設立し世界中の資源を買いあさっている。たくさんの国が国家戦略でソブリンファンドと組んで大規模プロジェクトに挑戦している時、日本ばかりがソブリンファンドを持たないというのは余りにも無策すぎると思うのですが、どうでしょうか。