高校卒業後50周年の同窓会に参加、会報誌に寄稿

 問題は・・・これからどのように生きるか


私が実社会に出たのは26歳の時でした。長い冬が過ぎて、待ちに待った春、現役の時代がいよいよやってきたのです。
その時決心しました。26歳は一つの運命であろうと。52歳を現役の中間点とし78歳まで現役を勤める。26年の半分の13年を一つの節目とし、最初の13年間の、39歳までは、一切の不平不満を言わずただ我武者羅に働いて仕事を覚える。52歳を現役の折り返し点として、それまでの蓄積を生かし進路を決めよう・・・と。
49歳で既に独立していましたが、52歳の時改めて考えました。65歳までのできるだけ早い時期に会社を黒字にする。65歳以降の現役のうちは、経済的な面で少しでも社会のお役に立てるようになりたい・・・と。
そして今。地方が不景気です。どうせ税金を払うなら地方へ払おうと、65歳の時、東京から鹿児島へ本社を移し、同時に一部の社員にも転勤してもらいました。地元の市長さん始めたくさんの人に歓迎してもらえましたので、昨年、私自身、一人暮らしのできなくなった家内の親の世話をするには田舎の方がいいということもあって、一家でこちらへ引っ越して来ました。
  

3年ほど前、堺屋太一氏の文章が目にとまりました。

東洋の伝統的な思想では、人生は冬から始まります。少年時代を黒い冬、玄冬といいます。亀(玄武)のごとく地を這い、体力と知力を積み重ねるときです。やがて20歳ころに春が始まる。これが青春です。龍(青龍)は雲を得て天に昇る飛躍のときです。40才からの中年は夏です。人生の赤い夏、朱夏です。雀(朱雀)は群がり騒いで派手に動く時期です。そして60を超えて実りの秋、白秋が始まります。虎(白虎)は、雀のように動き回ることも群れることもありません。自信を持って人生の収穫を楽しむべきなのです。そして、いったん事があれば一声吼えると天下が驚く。そんな境地こそ理想です。

人生は春から始まって冬で終わる」と考えている人がいます。大間違いです。60歳より上は、人生の実りを楽しみ味わう秋なのです。特に団塊の世代にとっては、自ら求める商品と流行を創り出し、「好きな遊び」を楽しめる「黄金の時代」なのです。

           
             団塊の世代「黄金の十年」が始まる(文芸春秋刊)より

私の考えてきたことに大変似ておりびっくりしました。人生の完成期・白秋を迎えるのが、堺屋氏は昔からの中国の思想をもとに60才といい、私は78歳からと、やや開きがありますが、今は昔よりずっと長寿になっておりますから、丁度いいのかも知れません。それにしても現役の78歳まであと10年しかなくなってしまいました。現役としては一応これまでのペースでよかったかなとも思っていますが、今後は若い人達にスムースにバトンタッチをしなければなりません。移住をきっかけに、たとえ利益が出ていたとしても、やたらと気を使わねばならない職種や、仕事の遂行上むつかしいものは手放し、「温泉水99」というミネラルウォーターの製造販売のみに絞りました。というのも、次世代の若い人たちが、普通の力量でも真面目にきちんとやっていれば人並み程度には暮らして行ける安定的な職種と判断したからです。そんな訳で今は、現役ではありますが時間がそこそこあるようになりました。

問題は、“実りの秋”をどのように迎えるのか。今までは仕事中心にやってきただけに、そこから離れた人生というものは想像もつきません。果たして、堺屋氏のいう「黄金の時代」を迎えられるようになるのでしょうか。諸賢のご意見を是非お伺い致したく遠い薩摩の地で首を長くしてお待ち申し上げております。   以上