山口県八代に、ナベツルが毎年10月はるばるシベリアからやって来る

フジテレビ第14回FNSドキュメンタリー大賞の番組を見た。カメラは10年間もそのナベツルとその世話をする村人を丹念に追っていた。



毎年10月に2000キロもの旅をして、はるばるシベリアからやって来る20数羽のボスは「黒太郎」だ。ツルの一家は普通、夫婦と子供1羽か2羽の3〜4人家族だ。例年、村人全員の温かいもてなしを受けた後、翌年3月北へ帰る。



毎年飛来する6家族は、各家族それぞれのテリトリーで暮らしていたものが、北帰行の頃になるとみんなが黒太郎の周りに集まって来る。(オドロキ!)。1996年3月のこと、村人全員見守る中飛び立ったが、数を確かめると23羽の内19羽しかいない。(戸惑う村人)。4羽の黒太郎一家まだ地上にいたのだ。その理由がやがて判った。遅れて飛び立った一家のうち一羽の子供がどうしても上昇気流に乗れないのだ。それを事前に知っていた黒太郎一家が飛び立つのを躊躇していたのだ。上空では19羽が待っている。一時間ほど繰り返し上昇を試みたがついに黒太郎一家はあきらめて地上に戻ってしまったのだ。その後驚くべきことが起こった。なんと19羽が戻ってきたのだ。そして翌日全員で無事飛び立って行った。村中全員で歓喜の声を上げていた。



1998年11月8日、八代にやって来たのは黒太郎1羽だけ。一体何があったというのだろう、みんなは気が気でない。九日遅れてやっと奥さんがやってきたが、足を引きずっているのだ。そして翌3月村人が緊張して見守る中、何とかシベリアに帰った。それも、全員が黒太郎の奥さんをいたわるように奥さんを先頭に立てて舞って行った。次にやって来た時は明らかに弱っているのが判る。村の老人や子供たちは心配そうに遠くから見守っている。再び、北帰行の時期がめぐって来たが、奥さんが忽然と姿を消してしまったのだ。北へ帰る仲間たちに迷惑をかけてはならないと自ら身を隠したというのだ。一家中特に黒太郎の悲しみ方が、人間の目にもよく判る。残された一家3羽があちこち探しまわる。ついに仲間たちは約一週間おくれの3月13日シベリアに飛び立った。そして一家はついにあきらめて、観測史上最も遅い3月24日に帰って行った。翌年黒太郎は新しい奥さんを連れてきた。



ツル一家の厚い愛情に感動しました。そのナベツルも年々減る一方で今では13羽に減ってしまったという。村人の一人が言う「ツルが生きられないのに人間だけが生きられる筈がない」と。