NHKの「カーネーション」が実におもしろい

1929年世界大恐慌が勃発した翌々年の昭和6年、まだまだ日本は不況にあえいでいた頃、百貨店の白木屋で火事があった。当時の店員は全員まだ着物で下着をつけていなかったため、屋上から飛び降りるのをちゅうちょしてたくさんの女性がなくなった。先日の韓国の沈没船ではないが、日本中が大騒ぎになった。NHKの「カーネーション」の主人公はファッションデザイナー「コシノジュンコ」3姉妹の母親である。その火事の新聞記事を見て、「これからの百貨店の制服は洋服になる」と確信し、「私に制服を作らせてくれ」と心斎橋百貨店(大丸?)に売り込みに行った。まだ結婚もしていない18か19の頃のことである。

何度お願いしても拒否され、「ちょろちょろした絵を見せられるより、現物をバーンと見せられた方がよっぽどおもろい」と父から助言を得たが、見本を作ろうにもその生地代さえもない。家の家財道具を心斎橋の質屋や道具屋でお金に替えて、生地を買い、制服を作った。制服の実物を見た支配人がついにOKと言ってくれた。さらに「新年の初売りにお披露目するため、1週間で20着を作れ」という途方もない注文に、主人公は「できます」と応じた。しかし家にはミシンさえない。あちこちかけずりまわり、おじいさんの家のミシンを借りることになった。以上が今日までのあらすじだ。

実はこの「カーネーション」は、4〜5年前、後半の10話か20話を見たことがある。その時の主人公はもう既に70(?)を超え、階段も容易に登れない。苦しみながらも一生懸命に洋服を作るおばあちゃんの姿をみて、孫が涙ながらに「そんな苦しい仕事はやめて!」と懇願する。おばあちゃんは「苦しくなんかない。ただ必死なだけや。スポーツ選手だって練習は苦しくなんかない。必死なだけや」というくだりが印象に残っていた。それで、今回の再放送を最初から見ているが、このような実話(勿論フィクションもあろうが)は実に味わいがあり、感動する。