元旦の新聞記事より

1月1日の新聞の元旦号は、社の総力をあげて新春特集号を作る。私は各社の新聞を読み集め、肝に銘ずべきもの、経済の動向、生き方、感動したもの等々切抜きした。(本年第1回目のミーティング議事録より)


 先ず、昨年までの日本はどうだったか。「失われた20年」に青春を過ごした若者たち。仕事、結婚、生き方と岐路に立たされる年齢だが、社会は閉塞感に覆われ、ますます生きづらくなっている中にあって、彼らは、好むと好まざるにかかわらず、選択を迫られている。毎日新聞はいう。

30代(30〜39歳)の人口は約1800万人。総人口の約14%を占める。思春期〜青年期がバブル崩壊以降の「失われた20年」と重なり、「生きづらさ」を最も感じている世代いわれる。       l
 その大きな理由が「仕事」。1993〜2005年は就職氷河期とされ、不況で企業が新規採用を抑え、労働市場からはじかれる若者が急増した。00年代前半には派遣労働規制が大幅に緩和され、正規雇用の職に就けなかった現在の30代前半の若者の多くが、一低賃金で不安定な非正規の職に就かざるを得なくなった。その後も、経済のグローバル化円高などが進み、従業員を正社員から非正規に置き換えたり、非正規雇用労働者の雇い止めや解雇が起きた。(略)
 今の時代は生きつらい?
「すごくそう思う。年間自殺者3万人って、未遂はもっといるってこと。ちょっとした戦争状態。私もみんなも、その時代を必死に生きてて。それを人ごとと思って漫然と生きてる人たちの想像力のなさは、超つまんない」

日本が積み重ねてきた膨大な借金。昨日おぎゃと産まれた赤ちゃんまでも一人700万円もの借金を負わせたうえに、今期の予算では、「年金交付国債」などという訳の判らないものを持ち出して、赤字国債をできるだけ小さく見せるという姑息なことまでやりだした。外来患者の100円上乗せや過払いの年金を本来の水準に戻す、など高齢者へ負担を求める案はことごとく見送りして、ツケを若者たちに先送りしようとしている。
第一、消費税だけで財政赤字を解消するには30%に、そのうえ1000兆円の借金を30年で返済するには40%程度に引き上げなければならないという試算があるにもかかわらず、国会議員数や公務員給与など、これらに全く手をつけずに消費税UPだけ提唱するという神経がわからない。

一方アメリカはどうか。(朝日新聞)。

米ニューヨークの中心部ウォール街にあるズコツティ公園。ここで昨年、世界に波及した「占拠デモ」を提起したカナダの無名の雑誌編集長はいう。「ウォール街こそ格差社会の元凶。本丸に乗り込んで市民の怒りを世界に伝えたいと考えた」
ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は「もうけが出たら大企業経営陣の懐にしまいこみ、損が生じたら一般庶民に押しつける。こんなやり方は資本主義とは言えない」と述べて、喝采を浴びた。

 このような世界的不条理の横行する中、東北を中心に大津波が押し寄せ、原発メルトダウンした。東日本一帯に飛び散った放射線は市民に塗炭の苦しみを押し付けた。200k以上も離れた東京でも、水道水までが汚染され、お気の毒にもこんなことが起こっていた。我々は、今後も本当にいい水を世の中に提供してゆきたい、と切に思った。(読売新聞)。

広田(仮名)さんは震災翌日、昼前に帰宅すると、断水よりも隣人女性を案じた。隣近所のご縁で、家庭事情を知っていた。夫は海外。1人で乳児を育てていた。「水がどこも売り切れなの」。女性は疲れた様子でベビーカーを押して帰ってきた。「うちのをあげるわよ」。広田さんが慰めた途端、女性は泣き崩れた。

 
 では、今年はどのような年になるのだろうか。毎日新聞は予測する。

2012年は国内外ともに政治の問題解決能力が厳しく問われる年になるだろう。なお予断を許さないユーロ危機で見えてきたのは、マーケットの千変万化の要求に対し、各国間、各国内の利害調整がなかなか追いつかない、という民主政治の苦悶があった。
 一方、民衆蜂起によって独裁政権をドミノ式に倒したアラブの春も、直画して小るのはいかに民意を代表できる新しい政体をつくり上げるか、という民主政治の試行錯誤である。本来民主政治の本家として、こういった国際経済、政治の危機管理に中枢的役割を果たすはずの米国も、国内政治に足をすくわれその問題解決能力をフルに発揮できずにいる。
 ひるがえって日本はどうか。「3.11」の復旧、復興は第3次補正予算の成立までは進んだが、なおすての作業は遅れ気味で」脱原発、エネルギー政策についてはその青写真さえ描かれていない。

 
 一方の大企業も新分野に生き残りを図る。いくら成長分野とはいえ、一事業に1000人をつぎ込むというから並大抵ではない。(日経新聞

自然エネルギーや最先端の電力制御技術、IT(情報技術)などをフル活用して、省エネや安全機能を高める環境配慮型都市「スマートコミュニティ」。東芝はこの分野を社会インフラ事業の新たな柱に育てると宣言した。収益化を目指して世界の競合相手とどう戟うのか、佐々木則夫社長に聞いた。
「ネット経由でサービスを提供するクラウドコンピューティング分野が弱いので補強する。1月l日付で専門の開発組織を作り、子会社の東芝ソリューションでも1000人をクラウド担当者に任命した。昨年に米ヒューレット・パッカード(HP)と提携したのは、データセンターのシステムや情報をやり取りするためのソフトウエアの開発を強化するためだ」
 いまのところスマートコミュニティ分野で?巨人″はいない。重電やIT(情報技術)、家電の各社が群雄割拠している状態で、どの企業が世界の主導権を握るかは見えてこない。明確なのは1社単独ですべての技術と事業を賄うことは不可能ということだ。だからこそ東芝は買収と提携で?空白地″を埋めるグループ作りに励んできた。

 こんな世知辛い世の中で、我々はいかに生きるべきか。80歳になる高倉健の生き方は見事だ。(朝日新聞


中国映画の出演から6年が経った。この撮影が終わったとき、抱き合って泣く中国人スタッフの姿を見て、大きな衝撃を受けた。「お金じゃない何かがあった。あれは何だったのか、とずっと考えていました。仕事ができなくなりました」
映画はもちろんCMなどへの出演も全部断った。「このまま映画を撮らずに死んでしまうのかな」とも思った。そんなとき出会ったのが205本目の出演作となる「あなたへ」の脚本だった。
「失った後、それがいかに大切だつたのか」に気づく男の物語。監督は降旗康男さん(77)。40年来コンビを組む盟友だ。
 「映画もCMも一切でない」という。やしきたかじんさんは、自分の気に入った商品をTVで紹介しても一銭ももらわない。この姿勢がすがすがしく、みんなが一目おくのである。我々がかってあこがれた銀幕の大女優が頻繁にコマーシャルに登場する姿は見るに耐えない。

 最後に、夢物語を加えたい。(朝日新聞

137億年前のビッグバンで誕生した宇宙は膨らみ続けている。しかも膨らむスピードを上げながら。いずれ止まるか、あるいは縮み出すか、少なくとも膨らむ速度は落ちるのだろう。そう考えられていたところ、「膨張加速」が前世紀末に発見された。専門家の間には大変な衝撃が走ったという。(略)
 宇宙誕生の瞬間には確かに存在したが、いまは隠れて見えなくなっている未知のものがたくさんある。始まりを人工的に再現してやれば、それらをとらえることができのだという。
 例えば宇宙全体の23%を占めるのに正体不明なままの「暗黒物質ダークマター)」もつくりだせる
はずだという。そうなれば大発見である。(略)
 素粒子物理学がめざすのは、宇宙で起こるすべての現象を支配するおおもとの法則を解明することである。
 うまくいけば、創成の時から今日までの宇宙の歴史がわかり、これからどうなっていくかもわかるはずだという。「世界の完全理解」である。
 しかし、それでもなお解くことのできない謎がこの世には残ると山下先生(東大素粒子物理国際研究センター)は言う。それは人間であり、人間の営みである。「人間がかかわったとたんに、ものごとはややこしくなり、わからなくなる」
 いま世界のあちこちで観察される政治の失調などは、先端の知をもってしても取り扱いに窮する対象の最たるものだろう。

 夢物語を、といってるのに、最後の数行は要らなかったか。