経営の転換点に際して(08.3.26火曜ミーティング議事録より)

②「まじめ」と「やるべきことをきっちりやる」

弊社においても、もっともっとお客様との密な関係を築き大切にする体制を築かなければならない。お客様が『99』を知り、購入し、使用し、再度注文していただくまでのすべての購買プロセスにおいて満足していただかなければ、お客様は離れていってしまうだろう。スタッフ全員が使いこなせることを基準とした「文書化」、「情報システム化」を今後も推進するとともに、スタッフ間の意識・技能面での差を縮めていきたい。それにより、十把一絡げ(じゅっぱひとからげ)、通り一遍の心無い失礼な顧客対応にならないよう改善することにより、お客様から、「水も良いけど会社も良い」と言われるくらいのサービスレベルにしたい。そのためには、これから述べる「自由闊達なボトムアップの社風」が不可欠と考えている。

戦後から1990年頃まで日本経済は右肩上がりに成長してきた。余程の例外を除いて皆が儲かった。その頃もっとも人気を博した「サラリーマンもの」のシリーズ映画は、植木等さんが主役を演じた無責任時代」と、浜ちゃんの「釣バカ日誌」である。
主役を演じた植木さんはお寺の住職を父に持ち、酒も飲まずそのまじめな私生活と芸への熱心な取組は人々によく知られていた。その生真面目な人が映画ではまったく正反対のバカな男を演じていたからこそ、そのギャップに人々は大受けしたのである。

一方、浜ちゃんは、無断欠席や遅刻の常習者ではあるが、契約をとってくるという営業マンとしての本来の仕事はチャンとやっている。そのため、会社を首になるどころか、普段のデタラメさにかえって人々は一目おいてあこがれを感じたのだろう。

このように「まじめさ」や「やるべきことをきっちりやる」ことができていれば、他のことは大目にみられた良き時代であったのである。それは、右肩上がりでほとんどみんなが成功した時代であり、「私の会社」、「会社の成長と共に私の人生がある」と実感できた時代でもあった。多少の失敗や暴走は許された。むしろ、向こう傷を恐れない若者が自由闊達に意見を具申し、上の者は良きに計らえと応じてくれたボトムアップの時代であった。

しかし、当時OECD30ヶ国の中で2番目の個人所得を誇っていたわが国であったが、それから20年経った今、年々その地位は下がり続けており、現在18位だという。給与が上がらないどころか、かえって下がっているのである。

また、その一方、「会社は株主のもの」という考え方がグローバルスタンダード(世界標準)として世界を席巻した。社長までもが株主の意向を慮(おもんばか)って、際限なく株価アップのための業績アップに邁進する。したがって、いくら企業業績がアップしたとしても厳しいコストカットと、賃金抑制は継続される。企業の方針はトップダウンで決定され、お客様と接する大切な第一線にいる若者は白けて「俺たちゃ関係ねエー」となる。こういう風潮が支配的である。

長期的な視点に立った「損して得取れ」という経営で何百年も生き長らえてきた老舗企業ですら、近年就任したトップがこの風潮に流され、短期的な収益を追い求めたばかりに、老舗という永い歴史に幕を閉じたところがここ数年で何社に上るだろうか?ミートホープを始め、問題を起こした企業はすべて例外なく「ボトムアップがあった形跡は微塵もない」。そこに働いていた人たちの精神的な荒廃は思い余るものがある。
 
ボトムアップ」と「トップダウン」、わが社は今後どうあるべきか?それは当然、前者の「ボトムアップ」型経営である。
ボトムアップ」のマネジメントで大切なことは、いつも言っている侃侃諤諤の職場にすることである。皆が会社を育てていこうという気持ちをもち、個人攻撃ではなく建設的な視点から意見を出し、みんなで話し合うマネジメント、これがボトムアップのマネジメントである。