本年の目標、それは「明るい職場にしよう」です。

日本の旧陸軍には、異常なほど規律に厳しく、四六時中、戦闘状態にあるかの如き雰囲気が漂っていたように見える。上官に冗談など言えるはずもなく、反論でもしようものなら手痛い体罰を受ける破目になるから、誰も疑問に思ったことを口にできない。
一方のアメリカ軍は、チューインガムを噛んだりしながら、同僚に限らず上官ともジョークを飛ばし合うなど、一見チャランポランな印象がある。常識的には、異常なほどの規律を保持する日本軍のほうが高い指揮統制能力を発揮し、勝利するように思えるが、結果的にはアメリカ軍が勝った。もちろん、武器の質や量の面でアメリカ軍のほうが勝っていたという面はあっただろう。しかし、チャランポランに見えたアメリカ軍も、戦闘になれば、それまでの弛緩した雰囲気が一変し、各兵個人単位での戦闘能力はもちろんのこと、組織単位での高い指揮統制能力を発揮した。
日本軍において高く評価された人材は、自分の意見を出さない、いわゆる「点取り虫」タイプである。一方、アメリカ軍では、軍の組織目的である「勝利」を念頭におきつつも、自分なりの考えを持ち、その場で何を成すべきかを理解して、緩急をわきまえた付加価値の高い動きをする人材が評価されたと考えられる。

私が評価するのもアメリカ型の「高付加価値の仕事」をする人であり、形式よりも実質を評価する。毎日、定時の間、与えられた仕事を務めあげるだけではなく、常に疑問をもち、仕事をより効果的・効率的にするための業務改善などに取り組む人が理想である。
明るく仕事に取り組めないのは、自分の働きに自信がもてない証ではないだろうか。まずは冗談の一つも飛び交うような職場にしなければならない。それが豊かな発想力と集中力に結びつく。もちろん、本社・工場・支社における仕事は性格的に大きく異なる面もあるが、今後は私自身もそのような活き活きした職場作りを目指していきたい。

「わいわいがやがや」の職場でなければ新しい創造もできず、危機に耐えうる打たれ強い組織(柔軟性のある組織)は生まれずにひ弱な組織になってしまって、やがては衰退、破滅に至る。指導者はまずはストイックでなければならないのだ。古くはオスマントルコの皇帝、近年では、西武の堤義明ダイエー中内功、最近ではコムスン折口雅博ミートホープ田中稔といった企業経営者が、自己の欲望のままに自制心を無くし、周りの建設的な意見を受け入れないワンマン体制を敷き、結果的に衰退したことは皆さんも承知のとおりである。誰もが侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論に参加し、反対意見もきちんと言い合える職場に変えていきましょう。