全員が賛成というのはおかしい

社内ミーティングの資料より

このところ売り上げがよいので社内はソフトムードでそれはそれで結構なことですが、昨今はそれが行き過ぎて安逸に流されているところが見受けられる。昨日3件の「購入申込書」が私のところに回ってきたのを例にとって、お話します。

 ?高性能サーバーの購入、?パソコン6台の入れ替え、?ダイレクト便の送付、の件である。
 昨日の稟議案件3件が3件とも稟議者9名が全員賛成というのはどういうことでしょうか。
私は、?は、処理データが増えてきており、より高性能のものを購入したいということについては賛成ですが・・・(略)
?は、まだ6台のPCは使えるのだから、なぜ今なのか、が気になりました。節税の意味合いもあるようですが、ものを買えば節税はできても、購入額の半分は、現金が出て行ってしまうのです。企業にとってキャッシュフローが命であることはよくご存知でしょうが、節税することによってそのキャッシュフローが減るのです。
?は、もともと私の考え方では反対ですが、「勉強にもなるから、まぁ一回やってみようか」となった訳ですから、50対50の訳です。それが稟議者全員がこぞって賛成というのは、気持ちが悪いのです。

私は3週前も、30年ほど前の「日本人とユダヤ人」という本の中で、「日本人は全員賛成ならなおよいと思っているが、ユダヤ人は全員賛成なら却下する」、また、奄美の柑橘業の方に聞いた話ですが「甘いみかん畑には一本酸いみかんの木を植えなければ本当の甘いみかんができないそうです」とも書きましたが、今度のことばかりではなく毎回毎回全員賛成では困るのです。せめて誰か疑問・質問の一つもなかったのでしょうか。

今朝TVで香川の事件を大々的に報じておりました。結局山下清さんは犯人ではなかった。それまでTVは、全部が全部あたかも犯人であるかのような取り扱いでした。三浦和義の時もそうでした。わたしは天邪鬼ですから、皆がそうだそうだと言っても、「本当にそうかな」と一歩はなれて見ることにしてます。是非皆さんも、みんなの意見に流されることなく自分の頭でシッカリ考え自分の考えというものを持って頂きたいと切に願うものです。

このところの一連の食品会社の偽装問題は内部告発によって、山田洋行は内部分裂によって防衛省の贈収賄事件が発覚しました。その結果はご存知のように惨憺たるありさまです。会社は倒産して社長はブタ箱、社員は全員職を失いました。なにしろ急なことですから、就職の準備などあるはずもなく塗炭の苦しみを味わっていることでしょう。
その原因は何か。社員が思ったことも言えず不満を心の中に溜め込んできたからである。
「侃々諤々やりましょう。時には喧々囂々になってもいいではないか」とたびたび言ってきました。自分の意見を持つということはそういうことなのです。全員賛成、全員沈黙というのは、結果的に先の食品会社や山田洋行のような悲惨な結末になるのだとうことをよくよく肝に銘じていただきたい。社長と執行委員の皆さんとのある程度の意思の疎通の欠けることは仕方ないとしても、皆さん同士の中に十分な意思の疎通ができないとしたら、この会社に将来性はありません。
 多少の意見の食い違い、軋轢を恐れて全員賛成というのは、誠に憂うべきことと言わざるを得ません。
 もう一つ考えられることは、「それは会社のことだから」「それはあの人のことだから」と、深く考えない、人ごとと考えているからかもしれません。こういう事態になったら、もう終わりです。そんなことで会社がうまく回るはずがありません。また、これまで一度も稟議に提案したことがないという人は、一体どんな仕事をしているのでしょうか。ものの購入ばかりでなくてもどんな提案でもいいではありませんか。
是非、「忌憚のない意見を言い合い、切磋琢磨して互いに磨きあう、そういう明るい会社にほろびはない」を実践して行きましょう。