大企業ばっかりが儲かる構造にますますなっていった結果は?

今回の好景気が、60カ月を超え、これまで最長だった「いざなぎ景気」(1965〜1970年)を超えたと政府は喧伝しているが、世の中はまったくその実感が無いというのが本当のところだ。

なぜならば、それは大企業に偏っていていまだにデフレから脱却できずにいるからだ。大企業は、そこへ納入する系列会社への支配力を高め、財務諸表をチェックし納入価格をトコトン安く迫る。その上、正社員をドンドン減らして派遣やパート、外国人労働者をふやして、労働分配率を引き下げ昨年は63%にまで低下した。また、一方、大会社は、傘下の企業に供給する卸価格はトコトン高めに設定する。生かさず殺さずである。ガソリンスタンド・コンビニ、レストランや衣料品店などのフランチャイズチェーンなど、みんなそうだ。


こうして、大企業ばっかりが儲かる構造にますますなっていった結果、どういうことが起こったか。

働いても働いても豊かになれない「ワーキングプアと呼ばれる、生活保護水準以下の暮らししかできない“働く貧困層”が増え続けている。今日現在その数は400万とも700万ともいわれ大きな社会問題となっているが、残念ながら今でもその流れは続いており、毎年約50万にも及ぶ膨大な数の人たちが増え続けている。雇用が回復したといわれる今も、大企業の正社員は依然として狭き門で、派遣やパートなどの仕事しかなく、働いても生活できないという給料しか得られない人が急増しているからだ。

一方、中小零細企業は、大会社への納入価格が海外との激しい価格競争の渦に巻き込まれたり、給与が上がらないため消費にまわるお金がなく、売上不振に陥って、廃業に追い込まれる企業が続出。苦しむ親の後ろ姿を見て育ったその子息が親の事業を受け継げたくないという後継者問題もあり、毎年5万社もが、倒産・消滅・吸収合併などでなくなっており、20年前550万社あった企業が430万社に減ってしまっているのだ。

その結果、地方の地域全体が地盤沈下している。再チャレンジしようにも、衰退した地域の中では、なかなか新しい仕事を見つけることはできない。さらに老後への不安も高まっている。公共料金・医療費など、自分の力ではどうにもならない支払いが増え、年金だけでは暮らせないお年寄りが増え続けている。

なぜ真面目にコツコツ生きてきた人たちが報われないのか。どうすればワーキングプアの問題を解決することができるのか。一人一人が抱える現実を直視し、社会のあるべき姿を探っていかなければならない。

失業、ニート、フリーター、ホームレスなどの雇用問題は、みなこの問題につながっているし、格差社会下流社会、地域社会の崩壊、都会と地方の地域差、一極集中、勝ち組と負け組みなどの格差問題、はたまた、消費者金融、多重債務者、自己破産、外国人労働者、社会不安などの社会の不安定要素はすべて冒頭の問題を起因としている。