リスクを理性的に判断する

熊本地震(くまもとじしん)は、気象庁震度階級では最も大きい震度7を観測する地震が2016年4月14日夜および4月16日未明に発生したほか、最大震度が6強の地震が2回、6弱の地震が3回発生している。日本国内の震度7の観測事例としては、4例目(九州地方では初)および5例目に当たり、一連の地震活動において、現在の気象庁震度階級が制定されてから初めて震度7が2回観測された。また、一連の地震回数(M3.5以上)は内陸型地震では1995年以降で最多となっている。

 つまり、これ程強い地震に見舞われたのは、日本の有史以来初めてのことだった。ここで注目したいのは、そのような強烈な地震の中心地の益城町にあっても、下記資料にもあるように2000年以降に建てられた建物のうち55.4%は無被害だったという事実である。
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桜島の噴火に対して、大学の先生が「ゼロではない」という。当たり前だ。ゼロではないのは誰もが分かっている。しかし「ゼロではない」といわれれば、行政は責任を負いたくないかどうかは知らないが、次に来てもいいように、つまり必ず来ると想定して過大な準備を強いる。「ゼロではない」がいつの間にか「100%」に変質してしまう。

 口の永良部島にしても、一回限りの噴火だった。「ゼロではない」から、行政は全島避難を島民に強制した。その後2年間全く噴火がなかったのに踏まえて、島民をようやく帰島させたが、いかんせん長すぎた。島は見る影もなく荒れ果てており、回復は最早不可能に近いという。本当にここまでの犠牲を払わなければならなかったのか。

 もう一度当時を振り返ってみよう。新岳から噴火し、噴煙が火口から約10,000メートルの高さまで達したのは2015年5月29日9時59分のことだった。そして全島避難緒命令が下された。「ゼロではない」が「100%」に変質した瞬間である。それまで、地震予知の専門家で誰も警鐘を鳴らした人もなく、余りに突然のことだったので、全島民が身支度を整え、 同島本村港より屋久島町営フェリー太陽にて避難先である屋久島に向け全島民避難したのは15時40分だった。つまり6時間近くも経っていた。しかもその間に、向江浜地区で犬の散歩をしていた男性が一人やけどをしただけだったのである。

 噴火をそれ程恐れるなら人口は137人( 世帯数82戸)しかいないのだから港に中古の船を一漕待機させておけばそれで済むのではないか。それこそ今度は、せいぜい2時間もあれば全員集合できるようし、前のことを考え併せれば人に被害が及ぶとは考えにくい。こんなバカなことを繰り返していたら、この島も無人島となり、どんな国の人間が住み着くとも限らないのだ。
 
 確かに地震も、火山も、テロも怖い。問題はそれに遭遇する確率である。これこそ理性である。それに引き換え、もっともっとリスクのある自動車運転やお風呂に入ることは平気である。
 自然災害ばかりでなく、我々が生きて行く中で、様々な危険に出逢う。その濃厚を冷静に理性的に見つめ、リーズナブルに対処することがなにより大切ではないだろうか。