亀井氏の「借金の返済猶予」は暴論だ。

亀井静香氏が「中小企業の借金返済を3年猶予する」と前々から言っていたのは知っているが、選挙前のリップサービス位にしか受け止めず本気にしてこなかった。しかし、金融・郵政改革担当相になった途端、本当に今度の臨時国会に法案を提出するという。これに驚いた証券市場は、銀行株が軒並み下落した。個々には銀行融資に問題があったとはいえ、「返さなくともいい」というのは、余りにも暴論である。これでは革命だ。国民はこのたび相当強く改革を願って投票したのだろうが、革命まで望んではいないはずだ。特に、国民新党はこのたび3名しか当選していないのだ。いくら参院キャスティングボートを握っているからとはいえ、調子に乗り過ぎているのではないだろうか。衆院は3名しかいないという重い現実をよくわきまえて、それなりの行動をしてもらいたいものだ。
私は、10数年来、政権交代を渇望してきた。権力は必ず腐敗するからです。この度の内閣の姿勢も総じて好感がもてるが、この返済猶予だけは、いただけない。「借りたものはかえす」。「約束したことは守る」。これは世の中の基本である。基本という重いものを、あれこれ軽薄な理屈をつけて破っていたら、それこそ世の中がもたない。
借りたものはどんなことがあっても、石にかじりついてでも、食事を1回に減らしてでも返す、そこから改革とか発展とか忍耐とか努力とか、高等な行動規範が生まれるのである。「返済猶予」は、ことは経済問題だけに限られるのではない、生き方、哲学、世の中のありかたにまで及ぶ大きな意味を含んでいるのだ。「中小企業受けする」などと軽々に判断してもらっては困る。