隣国・中国の経済発展が著しい。それに伴って、食料危機が懸念される

 やや古い書籍ではあるが、却って古い書籍ほど、その本の真贋が証明されているとも言える。改めて読み返してみて判ったことは、「ここに指摘されていることは、益々その度合いが強まっている」と。


だれが中国を養うのか?―迫りくる食糧危機の時代 (ワールドウォッチ21世紀シリーズ)

だれが中国を養うのか?―迫りくる食糧危機の時代 (ワールドウォッチ21世紀シリーズ)

 1950年代末の「大躍進運動」によって、何百万人もの農民が、道路や巨大ダムなどの建設に動員された結果、大規模な食料飢饉をもたらし、公式の記録では、3000万人の中国人が餓死した。このことはとりもなおさず2億人ほどが飢え死に寸前の状態だった、と推量される。

 それでも20世紀半ばまでは、水の需給のバランスも取れており、食料も自給自足でやって来れた。しかし今や水の需要が(この本の出版の1994年頃でも)6倍にもなっており、その増加分は地下水を汲み上げることで、何とか間に合わせてきた。しかし、その後の急速な経済発展のよる耕地面積の削減、灌漑用井戸の過度な汲み上げによる塩害、地球温暖化(もう既に指摘されていたのだ!)、大気汚染や酸性雨の被害等々によって、食料生産がどんどん減産する。その上、生活が向上して中国人が肉を食べはじめた。肉1キロ生産するためには、家禽肉なら穀物2キロ、豚肉だと4キロ、牛肉だと7キロの穀物を必要とする。その上、これまで汲み上げてきた頼りの地下水が、涸れ初めているのである。

 レスター・ブラウンさんは、「中国はまもなく大量の穀物輸入国となり、世界の食料価格に空前の高騰をもたらしかねないほどの輸入量になる」。その結果、「世界の最貧国の生命をたちどころに脅かす。第三世界の土地を持たない農民やスラムの住民など、すでに収入の大半を食料に費やしているような人々は、食料価格がわずかでも上がれば生存を脅かされかねない」「中国の将来の食料不足を推定するというのは、そら恐ろしい作業である」というのである。

 十数年も前に氏によって指摘されていることが、改善されるどころか、むしろその傾向を強めている。我々の子供や孫たちの幸福を願わない人は誰もいない。その子孫のために、我々は何かをしなければならない。